さくらいふ

28歳女ひとり、インドと日本の狭間で

ふるさと

 

ふるさとの自然をおもう

青く澄んだ空を

どこまでも高く高く澄んだ青空を

冬の朝の張り詰めた空気を

あたたかい石油ストーブのにおいを

犬小屋で散歩を待つチャッピーを

いつでも変わらなく流れ続けるあの川を

わたしの中の葛藤や悲しみ

よろこびの全てを

静かに受け止めて

流れ続けていたあの滝を

つめたく透き通ったあの水を思う

 

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わたしはここにいる

朝から晩までつづく騒音の中に

ラクションと話し声と雑音の中に

ひしめき合うビルと家々とスラム街の中に

川一面、層になって降り積もったゴミの中に

スパイスと油とにんにくの中に

道ゆく人々に凝視され

時には笑われ

チャイナと揶揄され

わたしはここにいる

 

ふるさとで待つ人々を思う

涙をこらえて送り出してくれた母を

一ミリの迷いもなく応援してくれる父を

わたしを守り支えてくれる兄たちを

心おきなく話し合える、わかり合える友を

 

わたしはここにいる

ことばのわからぬこの地で

常識が存在しないこの土地で

人々にいらだち幻滅し失望し

人間を嫌いになりながら

自分を嫌いになりながら

人間がいとおしくて泣いている

 

 

ふるさとはここにある

わたしの心の中に

目を瞑らなくても

しっかりと手に掴み取るように

あの山も川も星空も

わたしの中に全部ある

見知らぬ人々の中に

あたたかいまなざしを見る

母親のような

兄のような

日本人でもなくインド人でもなく中国人でもなく

わたしをたったひとりの人間として

その瞳に映すまなざしが教えてくれる

わたしはここにいる

わたしはここで生きている

  

 

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